ほけんだよりを作るときに・・・
(1)いろいろなほけんだより
ほけんだよりを発行する目的は、いろいろあると思います。学校の規模や実状にあわせて、あるいは養護教員の保健教育の方針によって、その季節によって・・・。子ども向けのもの、保護者向けのもの、教職員向けのもの、必要に応じて使い分けている場合が多いでしょう。「からだの学習」を取り入れるのは、ほとんどが子ども向けのほけんだよりですが、全てのほけんだよりに取り入れる必要はないと思います。場合によっては、注意事項だけが並んでいる、というものがあってもいいはずです。
例えば、インフルエンザが流行していて学級閉鎖が行われているときなどは、たくさんの「してほしいこと、してはいけないこと」をまず子どもたちに伝えなければなりません。こんな時は「からだの学習」を盛り込むのは無理でしょう。伝えたいことがたくさんある場合は、「からだの学習」には向いていないようです。無理をしないで、子どもたちにとってまず必要な情報の提供を第一に考えます。
(2)ネタをみつけて料理する
健康診断の事前指導と違って、ほけんだよりの内容は、養護教員が自由に選択することができます。その際、わたしが考えていることを幾つかあげてみたいと思います。
何年も前から、表紙に「ネタ本」と書かれたノートを愛用しています。5冊ほどになりましたが、文字通り様々な保健教育の「ネタ」がメモされています。テレビやラジオで見つけたものや、子どもたちの何気ない一言、わたし自身の疑問などが書きこまれています。ほけんだよりはこの「ネタ本」から作られることが多いのです。
「ネタ」が決まると、次に考えるのは「どう料理するか」ということです。同じ材料でも料理の仕方によって最高のものになったり、消化不良を起こしそうなものになったりします。だから料理の仕方には、気をつけていることが何点かあります。
①子どもたちの生活につながるものにすること。からだの感覚や体験につながったり、
これかの生活の仕方に影響するようにすることで、指導が子どもにとって生きたものに
なります。
②子どもたちが検証したり、実験したりすることができるようにすること。
③五感に訴える内容にすること。模型や実験を見たり、自分のからだを触って感じたり、
暑さや寒さを感じたり、と五感を使って具体的に感じ取ることのできるものにする。
①~③の内容が、少しでも活かされているように配慮して作成します。
(3)発達段階をふまえて
とは言え、どんなに重要なネタでも、子どもたちの発達段階に合わないものは教材にはできません。難しすぎるものは、ノートに書きこんだまま、放っておかれます。特に小学校では1年生から6年生まで、子どもたちの理解度には大きな開きがありますから、どのような内容なら理解できるのかしっかり考えます。高学年は抽象的な内容も理解できますが、低学年はできるだけ体験や感覚につながる内容を選択します。
中学生になると、データや複数の情報から結論を導き出すこともできるようになりますから、様々な観点からネタをひろうことができます。
ここでは、1,小学校低学年、2,小学校中学年、3,小学校高学年、4,中学生の4つに分けてほけんだよりを提案しています。ただ、この学年分けは、あくまでわたしが目の前にいる子どもたちの実態に合わせて行ったものです。使用する際は、あなたの学校のお子さんたちの実態に合わせてお使いください。
(4)教えたいことは1つにする
「養護教員の授業は教えたいことがありすぎて、一人でしゃべっていることが多い」と言われたことがあります。確かに、つい「あれも教えたい、これも教えたい」と、短時間の指導にたくさんの内容を詰め込んでしまいがちです。しかし内容が多くなると、どうしても子どもたち自身が考えたり、悩んだり、話し合ったりする時間が少なくなり、指導者が答えを教えてしまう、というパターンに陥りがちです。まず必要なのは、子どもたちが考えたり、感じたりするゆとりですから、教えたいことは1つにします。このページに載せたほけんだよりは、基本的に5分、長くても7分以内で終了するように考えて作成しました。
また、内容によってほけんだよりをどのタイミングで使うかもいろいろです。例えば・・・
①問題提起をして、まずはみんなで考え、その後ほけんだよりに書いてある答えや説明を読む。
②最初にほけんだよりを配布する。疑問とそれを考えるヒントだけが書いてあり、みんなで考 えた後、出た答えをこども自身が書き込む。
③完全に読み物として作成する。読み進めることで「なるほど」や「納得!」が得られるよう なおもしろい文章を元にする。
(5)指導資料と教材
ほけんだよりは教師用指導資料と一緒に配布されます。教師用配付資料には、ほけんだよりを配布する際、どのような指導をするのかが書かれています。教師と子どもの対話形式で書かれているものもありますし、手順が複雑でないものは、箇条書きになっている場合もあります。
使用する教材は、できるだけ先生方に直接見てもらい、説明しますが、まずは先生方が大盛り上がり・・・。真っ先に「からだの学習」をするのは、先生方です。指導資料には、子どもたちには説明しないけれど、先生方には知っておいて欲しいことを付け加えることもあります。子どもたちよりさらに踏み込んだ詳しい内容を知ることで、納得して指導にあたることができます。
*このホームページ掲載のほけんだよりのカットの一部は、東山書房発行の「健康教育イラスト・カット 1,2」から使用してあります。