小学校5年 初経指導

2020年9月13日
カテゴリ:その他

この指導は、ミルミル個人の実践ではありません。「“人間と性”教育研究協議会」のメンバーと一緒に授業づくりをして完成させたものです。実際の授業実践は、採用3年目の若手養護教員が行い、その結果を3人のメンバーで検討しました。
2019年に公開講座として発表しています。

宿泊を伴う校外学習の事前指導として、女子だけを対象に1時間の半分(20~25分)での実施です。
月経のしくみは、小学校4年生の教科保健の学習に始まって、何度も説明を聞く機会はあるのですが、大学生を教える先生方から「大学生になっても月経のしくみがわかっていない」という話をよく聞きます。一方的に説明を聞くだけの指導は、やはり子どもたちの中に「生きて働く認識」として残りにくいのですね。
そこで、短い時間ではありますが、できるだけ子どもたちが自分で疑問を追求できるような工夫をしてみました。それ以外の細かな注意点は配布物にして、いつでも確認できるようにしてあります。配布プリントのカットを書いてくれたのは、同僚の先生です。
5年生の月経に関する知識は部分的で、不十分なままですから、この学習のねらいは「おおよそ月経のしくみがわかるようになる」ことです。バラバラな知識やイメージをつなげていきます。また、「月経って面倒だよね」という本音も追求の糸口にしました。

 

学習の流れ

T:では、お話しを始めますよ。皆さんが楽しみにしている校外学習が近づいてきましたね。いい思い出がたくさんできるよう、いくつか先生からお話をしたいと思います。どんな話かというと、月経のお話しです。皆さんは生理、って言ってるかな。でも正しくは月経と言います。ぜひ覚えてください。さて、月経のことは、去年4年生の保健の時間に勉強したと思うのですが、覚えていますか?
S:覚えています。
S:忘れた。覚えていないです。
T:月経はここにいる女の子なら、ほぼ全員に起こることです。でも、月経のことをよくわからないまま月経が始まったら、ちょっと不安になりませんか?
S:不安だと思う。
S:病気じゃないかと心配になる
T:そうだよね。では、今日は月経について、「おおよそのことは知ってるよ」と言えるようにしましょうか。ではまず最初に、みんなが月経について今知っていることを教えてください。4年生で勉強したことでもいいし、それ以外のことでもいいよ。
S:月に1回、血が出てくる。
S:卵子と精子が合体しないと、生理が起きる
S:子宮の膜がはがれてくる。
S:1週間続く。
S:始まるとお祝いをする。
S:妊娠すると止まる。
T:(板書する。ポイントとなる言葉はカードに作っておく)いっぱいでてきましたね。まとめると、どうなるかな?「精子と卵子が合体しないと、月に1回、子宮の膜がはがれて、血と一緒にからだのそとにでてくる。それは1週間くらい続いて、子どもができたときは起こらない。月経が始  まると、お祝いをする」ということになるかな?すごい、これだけでもちゃんと説明になってよ。みんなよく知っているね。では、もう少し詳しくみていこうか。「子宮」ってあるけれど、どこにあるの?
S:おなか
S:(手で触って)この辺
S:卵ぐらいの大きさ
T:その通り、よく知ってたね。
S:お母さんが言ってた。
T:そう、お母さんもすごいね。そうなんです。この絵を見てください(図1)。からだの中が書いてあるよね。子宮は(図をさして)これです。おなかの下の方にあるんですね。この子宮の膜が  はがれて、血と一緒に出てくるということだよね。どこの膜がはがれるの?この外側?べりべりべ  り・・・とか?
S:え~っ、違うよ先生。子宮の中の膜がはがれるんだよ。
T:中?そうか、それでは、子宮を半分に割ってみようか(図2)
S:でかっ!
S:(笑い)
T:見やすいように、すごい巨大に作ってみました。さて、どこの膜がはがれるの?○○さん、どこか指してみて。
S:(内側を指して)ここです。
T:なるほど。でもここがはがれてしまったら、子宮がなくなってしまいませんか?
S:膜は、少しずつ厚くなる。
T:え、厚くなるの?
S:保健の教科書に書いてあったよ。
T:そうか、厚くなるのか。突然ボン!って分厚くなる。
S:(え~っと言う声)違うよ先生、少しずつ厚くなるんだよ。
T:失礼しました。みんなの言うとおり、少しずつ厚くなっていきます。(色の違う子宮内膜をはり重ねていく)このくらいでいいですか?
S:いいです。
T:こんなふうに、子宮の膜は、時間をかけて厚くなっていくんですね。最初にみんなが「月に1回来て、1週間くらい続く」って言ってたから、だいたい3週間かけて子宮の膜が厚くなっていって、次の1週間で月経が来るのかな?(図3)これでだいたい1ヶ月、正確に言うと28日、4週間です。
S:そうか、だから「月」の漢字がついているのか。
T:お、なるほど。いいことに気がついたね。そういうことだね。月経の「月」は、そういう意味で使われている言葉なんだね。さて、その月経の時に出てくるのは、みんなの意見だと血液と子宮の膜ということだね。あれ、そういえば、卵子はどこにいるの?精子と合体しなかったんだから、卵子はどこかにいるよね。
S:え~っ、わからない。どこかにいるんじゃない?
S:卵子は月経の時、一緒にからだの外に出るんだと思う。
S:月経の血と一緒に流れてでる。
T:ということは、月経がおきるまで、卵子は子宮の中にいるということかな?卵子って最初はどこにいるの?最初から子宮の中にいるんじゃないよね。
S:(指さして)あそこ
T:どこどこ?(指し棒を渡す)
S:(大きな子宮の絵の卵巣部分を指して)ここ。
T:ここ?名前知ってる?
S:知らない。
T:ここは、「卵巣」と言います。「卵子の巣」と書く。つまり卵子が大きく育つ場所です。(図2を指しながら)卵子はここから飛び出してきて、ここ(卵管)を通って、子宮に運ばれます。いつ頃卵巣から出てくるかというと、(図3を指して)この辺、ちょうどこのあたりで卵巣からポッ!て出てきます。でも、この図で見ると、卵子が出てきてから月経まで、かなり時間があるよね。その間、卵子は子宮の中でずうっと待っているのかな?(間)実は、卵子の寿命はだいたい24時間くらい、と言われています。死んでしまったら精子と合体できないので、死んでしまった卵子は、こわれてなくなってしまうんです。だから、月経が起きる頃は、卵子はもう壊れてなくなってしまっています。どう?卵子のこと、わかったかな?
S:わかりました。
T:そこで、「卵子もなくなったし、精子と卵子は合体しなかったから、子宮の膜もいらないか。からだの外に出してしまおう。」ということで、月経が起きます。これが、毎月繰り返されていき  ます。では、みんなに最後の質問。何のために子宮の膜は厚くなるんでしょうか。毎月毎月こんなふうに厚くなっては月経で外に出し、また厚くなっては月経で外に出しって繰り返すんだろうか。不思議だと思わない?
S:思う。
S:毎月月経があって面倒くさい。
S:ない方が楽。
S:でも、赤ちゃんができると月経は来ないんだよね。
S:それって、赤ちゃんのためにあるってこと?
T:子宮って何をするところだっけ?
S:赤ちゃんを育てるところ
T:そうだよね。だとすれば子宮の膜が厚くなるのも、月経が起きるのも、赤ちゃんが育つことと関係がある、ということかな?
S:多分、そうだと思う。
T:(図2を使って)卵子と精子が合体して赤ちゃん、つまり新しい命ができると、新しい命は子宮の膜にくっついて、子宮の中で育っていきます。子宮の膜が厚くなっていると、そこにくっつくんです。命は厚い膜の中にむにゅって入り込んで、そこで大きくなる。でも新しい命ができないと一度膜をからだの外に出してしまって、また新しい膜を作る。ずうっと同じ膜のままじゃだめなんです。毎月毎月新しいものに作り替えるんです。さらに、子宮の膜の中には血液が流れていて、新しい命を育てるときに血液の中の酸素と栄養を新しい命にあげるので、子宮の膜が厚くなるときには血液も集まってくる。だから膜がはがれて月経になって出てくるときは、血液がでてくるんだよ。膜が厚くなるのも、月経がおきるのも、新しい命を育てるために必要なことで、それを毎月新しいものに作り替えているんです。
S:不思議。
S:からだってすごいね。
S:しくみがわかって、ちょっと安心した。
T:みんなも、そういうしくみを持っているんですよ。さて、では月経のしくみがずいぶん詳しくわかりましたね。まとめてみましょう。(最初にまとめたものを使ってさらに学習したことを付け  加えてまとめていく)

配布プリント

 

教材の作り方

板書
「1週 まくがあつくなる」と書かれた画用紙の色と、1週目の分として子宮に貼り付ける子宮膜の厚くなる部分の色は同じに作ります。同様に2週、3週、それぞれも子宮に貼り付ける子宮膜の厚くなる部分の色を同じに作ります。

 

卵子は、赤の画用紙を丸く切って磁石に貼り付けたものと、卵子が分解される様子を示すために、赤の画用紙をキザギザに切って貼ったものと2種類作ります。