中学生 むし歯を防ぐ水「だ液」

2019年11月26日

新しい小中の保健体育教科書には、「ステファン曲線」を基本にしたと思われるグラフが載ってるものがあるようです。そこで、某テレビ局のような誤解が生じないよう、酸性・アルカリ性が理解できそうな中学生には、ちゃんと説明したいと考え、ショート指導を考えてみました。
ちなみに、「酸性・アルカリ性・中性」は小学校6年生、「PH」は中学校3年生理科で学習します。

T:では、最初に(①)このグラフを見てください。これは、ステファン曲線と言って、あるものを口に含んだ後、口のある部分での酸性度の変化を示したものです。何かを含む前は、口の中は「7」と数字のあるところ、つまり酸性でもアルカリ性でもない、中性です。小学校で習ったよね。
でも何かを口に含んだ後は、中性から酸性に変化していきます。ここに点線がありますね。この点線を下回るとむし歯ができやすくなりますから、何かを口に含んだ後5分くらいたつと一番低くなり、やがて20分後くらいには点線の上に戻っていきます。つまり、この20分間が、むし歯になりやすいんだよ、ということを示したグラフです。
さて、みなさん、このグラフは、何を口に含んだ後のものでしょうか。
S:ご飯だ。
T:お米のご飯を食べた後、という意味?
S:違う。食事をした後です。
T:3食の食事の後、ということかな?
S:そうです。
S:おやつじゃない?
S:ジュースとか・・・。
T:3食の食事と甘いおやつやジュースではかなり違うよね。何が違うかな。
S:砂糖の量が違う。
T:お米の中にも糖分は入っているし、おかずの中にも糖分は含まれています。でもその量は、食べるものによってずいぶん違うよね。このグラフのような結果を出すのは、すごく難しくないですか?
S:う~ん、そうかも。
S:その日によって違ってくるか。
T:だとすればこれは、ある特定のものを口の中に入れた後の実験結果、ということになります。さて、何だろう。
S:ジュースだったら、同じものを飲めば大丈夫だと思います。
S:お菓子でも同じだったら大丈夫だよ。
T:さすが、皆さん!実はこれは(②提示)これを口に含んだんです。代表してAさん、飲んでみて。
S:(飲む)あ、おいしい、甘い!
T:当然。砂糖水だから。10%の砂糖水、つまり(③提示)この500ccのペットボトルの中に(④提示)50gの砂糖が入っている水です。かなり、甘い!
S:なんか、すごいよ、甘くて・・・。
T:つまりこのグラフは、口の中に10%の砂糖水を含んだ後の変化を示したもの、ということになります。もう一つ、質問です。口の中のどこを調べたのでしょうか?
S:えっ、口の中全体じゃないの?
S:わかった、歯の表面。
S:奥歯のかみ合わせ。
S:歯と歯の間。
T:全部言ったらどれか当たるって思ってない?
S:(笑い)
T:ではヒント。むし歯を作り出すミュータンス菌は、どこにいるの?
S:わかった、歯垢の中だ。
T:そう、正解は歯垢の中。しかも4日間歯磨きしなかった口の中の歯垢の中です。
S:4日も?
S:うぇ~、自分だったら気持ち悪い。
S:すごい汚れているってことですか?
T:そうだね、かなりですね。たっぷりと歯垢がついていたかもしれないね。つまり、口の中全体がグラフのようになるという意味ではない、ということになります。では、まとめてみますよ。このグラフは、(⑤)4日間歯磨きをしなかった人が、10%の砂糖水を口に含んだ後の歯垢の中のむし歯になりやすさ、を示したもの、ということでいいでしょうか。
S:はい!
T:3食の食事をした後は、これと同じ結果になるかどうかはわかりません。なぜなら、食事の中に含まれる糖分の量は献立によって違うし、さらにもう一つ、影響を与えるものがあるんです。このグラフで、5分後に一番低くなった後にどんどん中性まで回復しているのは、だ液の働きによるものです。食事をすると、だ液はたくさん出ますよね。ただし、人によって出る量は違います。そのだ液が酸性になっていた歯垢の中を、中性に戻してくれるんです。
こんな実験をした人がいます。(⑥)中性の水の中に、塩酸という酸性の液体を入れたところ、7から2.3まで下がったそうです。2.3だから、かなり強い酸性です。ところがこの人のだ液は中性で7.1あったそうですが、その中に同じように同じ量の塩酸を入れたところ、6.1までしかさがらなかったそうなのです。
S:へえ~、すごい。
S:それならむし歯できないよね。
S:だ液って強いんだ。
T:ただ、食事をした後がこの実験と同じようだとは限りませんよ。だ液の性質は、人によって違うこともありますからね。でも食事の時によくかんで、たくさんだ液を出すと、酸性だった歯垢の中をちゃんと中性に戻す力を、だ液は持っている、と言えるということです。それでも糖分をたくさん含んでいれば、やはりむし歯にはなりやすくなる。皆さんのからだは、こういう自然の働きを持っている、ということです。
S:よくかんで食べよう。

教材
①ステファン曲線のグラフ(インターネットにたくさんありますので、見やすいものを)
②紙コップの中に10%砂糖液を作っておく。
③500ccのペットボトル  何でもよいがラベルははずしておく
④角砂糖、もしくは粉砂糖  50g
⑤まとめを書いたカード「4日間歯磨きをしなかった人が、10%の砂糖水を口に含んだ後の歯垢の中のむし歯になりやすさ、を示したもの」
⑥実験を示した絵・・・この実験は岡崎好秀氏によるもの