各学年1時間のカリキュラム(小学校用)

2020年1月8日
カテゴリ:その他

性の学習は、「生き方の学習だ」と言われています。わた
も同感です。学習というより、「生き方を考える時間」と表
現した方がいいかもしれません。

だからこそ、性の学習は、子どもたちの思いに添って充分時
間をかけ、子どもたち自らが学び、考える工夫をして行われ
るべきものです。

これまでわたしが実践してきた性の学習は、小学校では学年
3時間、中学校では3~5時間をかけて、カリキュラムを編
成した上で実施してきました。

しかし最近は、3時間や5時間といった学習時間を確保する
のが難しくなっていて、「もっと短時間で実施するには、ど
んなことを教えたらいいのでしょうか」という質問を受ける
ことが多くなりました。「例え時間数が少なくてもいいから、なんとか性の学びの時間を、子どもたちに提供したい」とい
う熱い思いを抱いている方がたくさんいるのではないでしょう。

そこで、各学年1時間しかない時は「こんな授業をしてみてはどうでしょうか」というカリキュラムを作ってみました。
基本になったのは、わたしが作成した小学校、中学校のカリキュラムです。それぞれ各学年3時間の授業を実施する計画ですが、その中から1時間を選んでみました。ただし、3時間を1時間にするために、元になった授業を修正した部分もあります。

授業の前には、どのような方針でどのような内容を教えるのかを家庭にお知らせしておきましょう。
今でも性の学習というと、「性交について教える授業」というイメージを持っている大人が多く、その誤解を解くためにもしっかり正しい内容を伝えましょう。



1年生・・・前半は命のできる基本を、後半は成長に個人差があり「一人一人は違った人間である」ことを理解させる内容です。カリキュラムには「卵子」「精子」と表記してありますが、「命のもと」と言い換えても構いません。「5人の友達の例」は、知り合いや同僚に協力してもらえば、データは集まると思います。生まれたとき、3才、6才と3つの時期の身長を比べると、大きさの順番が一様でないことがよくわかります。名前は別につけて、個人が特定できないようにしましょう。

2年生・・・使用する用語は、1年生で「命のもと」と表現したものを「卵子」「精子」に置き換えてもいいですし、そのまま「命のもと」でも構いません。少なくても4年生になれば、「卵子」「精子」という言葉が教科書に載ってきますから。「卵子」「精子」だけでなく、「卵管」「精管」は卵子や精子の道路、それぞれの出口は「門」と表現することで、それぞれの器官の関係性がわかるようにしました。
そして最後にそれが「プライベート・ゾーン」であること、「自分だけの場所」であることやその意味についてしっかり伝えましょう。性被害にあわないように、あったときはそれをまわりの大人に伝えられるようにしておきましょう。

3年生・・・性の学習の柱の一つは「命」ですが、もう一つは「人権」です。その「人権」を学ぶ内容も性の学習には欠かすことのできないものです。ここでは、その人権を侵害するものとしての「性差別」を取り上げてあります。今は長い髪の男性も、トラック運転手の女性もたくさんいるので、教材には事欠きません。もし、身近にそういった人がいない、という方には、次の本をお勧めします。
「わたし」が選んだ50の仕事  古庄 弘枝著 (亜紀書房)

4年生・・・保健体育教科書の発展として授業をしてみましょう。用語も正式に「卵子」「精子」を使います。3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月の胎児の様子から、胎内の赤ちゃんがどんなふうに生きていたのかを探す授業です。一方的に説明するのではなく、必要なヒントを提供することで、子どもたち自身が答えを探すことができるようにします。

5年生・・・「人権」のもう一つの教材です。普段子どもたちは何気なく「おかま」「変態」といった言葉を使っていますが、それが当事者をどんなに傷つけているのかを振り返ってもらう授業です。単純に性別に多様性があることを知らせただけでは、なかなか「人権」の授業にはなりにくいのです。「かわいそうな人たち」で終わってしまうからです。「もし、自分がそうだったら・・・」という想像力を充分働かせる授業になるようにしましょう。

6年生・・・性の学習3つめの柱「コミュニケーション」の授業です。少しは恋愛に興味が出てきたかな。でも交際する前に知って欲しい。以前は中学校1年生で実施していたのですが、今は6年生でも大丈夫なようです。教材になるのは松田道雄著「恋愛なんかやめておけ」の中の「恋愛列車の行き着くところ」という部分です。「ちくま少年図書館」の中の1冊ですので、子ども向けに書かれており、多少古い資料ですが伝えたいことがきちんとわかりやすくまとめられています。文中の「人間としての能力」と「自立」を考えさせます。

本来のカリキュラムでは、ここで取り上げた1時間をより深化させ、子ども自身が考えられるようにするため、さらに2時間の授業が計画されています。
例えば5年生の「多様な性」の前には「男女の違い」「性差別の歴史」それぞれ1時間ずつの授業があり、まず男女差別について考えた後に「多様な性」を考えられるようになっています。男女2つの性にこだわる必要がない、という学習を行った上で、さらに多様な性について学ぶことで、どんな性も尊重されるべき、という視点に立てるように構成してあります。