ほけんだより(小学校・上学年、中学校)

2020年5月31日
カテゴリ:その他

すでに「新着情報」の記事で書きましたが、新型コロナとうがいや手洗い、マスクの効果について、今の時点での科学情報をほけんだよりにしてみました。
なんとなくの習慣やイメージではなく、科学的に根拠のある情報を、ぜひこの機会に子どもたちに提供しましょう。
ただ、小学校1~3年生には、まだ難しいと考えられましたので、4年生以上のものと中学生用のものを作成しました。小学校1~3年生には、口頭で直接どんな行動をするのかを説明してはどうでしょうか。
ほけんだよりと一緒に、下記のような内容から選択して指導資料を配付し、まず教職員全体で共通理解をはかりましょう。その上で、実際にほけんだよりを使った指導をする際に、子どもたちの様子を見ながら、説明を付け加えてもらいます。

 

感染ルート
基本的には「飛沫感染」と「エアロゾル感染」、「接触感染」です。
感染症の予防は、感染ルートを絶つのが原則です。

うがいについて
ご存じのように、うがいは日本人独特の予防行動です。古くは平安時代に始まったようで、口の中を清潔にするためと、炎症を和らげるためだったようです。
うがいの語源も鵜が魚を捕る漁「鵜飼」だ、と言われているようです。鵜が飲み込んだ鮎を吐き出す様子が似ているから・・・という理由のようです。
他に有名な話としては、戦国時代の武将北条早雲が「うがいをした水を捨てずに、飲め!」と言ったとか、徳川家康の家訓にもうがいが載っているそうですから、この頃にはかなり広く認められた方法だったと言うことでしょうか。
室町時代の国語辞典「下学集(かがくしゅう)」にもうがいのことが書かれています。

と言うわけで、うがいはきちんと科学的に検証されることがないまま、「効果がある」と日本人は信じてきたわけですが、2000年代に入ってようやく様々な検証が行われるようになりました。

結果は・・・・インフルエンザなどの感染力の強い病気には予防効果はない、というものです。ただしこれも「エビデンス」ではありません。今のところ証明されなかった、ということです。
効果がありそう(これもエビデンスではなく、「そういうデータもある」レベルです)なのは、一般的な「かぜ(上気道炎)」の場合。
ちなみにインフルエンザウイルスは、喉の粘膜にとりつくと、数分から20分程度で細胞内に入り込んでしまうので、うがいでウイルスを排除しようとしたら、5分に1回うがいをして生活しなければいけないことになります。

そのため、以前はインフルエンザ予防には「うがい、手洗い、マスク」のポスターを作っていた厚労省も、今作成しているのは「手洗い、マスク」のポスターです。
また、2011年に改訂された「新型インフルエンザ対策行動計画」には「うがいについては、風邪等の上気道感染症の予防への効果があるとする報告もあるが、インフルエンザの予防効果に関する科学的根拠は未だ確立されていない」と書かれています。同様の内容は、「首相官邸ホームページ」にも出ていました。

と言うわけで、新型コロナウイルスにもはっきりした効果は証明されていないため、国はうがいを推奨予防行為として取り上げていません。

さらにこの新型コロナウイルスの場合、舌にウイルスの受容体があり、だ液の中に多量のコロナウイルスが含まれていることが明らかになっています。
そのため、もし不顕性感染の児童生徒がいた場合、集団でうがいをすることによって、水屋にウイルスが吐き出され、場合によってはそれが飛沫感染、エアロゾル感染の原因になる可能性も考えられます。

この感染の危険性は、歯医者さん達の団体からも指摘されていて、「学校でのフッ素洗口を当面中止するべき」との意見がまとめられています。
同様に考えると、歯みがき後に水を吐き出すことも感染の危険性があることになります。

手洗いについて
極端な言い方をすれば、身の回りにどんなにたくさんウイルスがあっても、それが体内に入らなければ病気にはなりません。そこで体内にウイルスがはいらないようにするのが手洗いの役割です。
石けんを使った手洗いもアルコール消毒も、手についたウイルスを殺したり、流し去ってくれますから、予防効果は十分あるとされています。
ただ、頻繁に手洗いやアルコール消毒を繰り返すことで、皮膚が荒れてしまうことになります。特にアトピー性皮膚炎を持っている子どもたちは大変です。十分な配慮をしてあげましょう。

元来私たちの皮膚の表面には、10種類以上の細菌がいて、角質化して古くなった細胞を食べてくれたり、皮膚の表面に弱酸性の脂肪酸を作り出して、他の病原菌がくっつかないようバリアの役割を果たしてくれています。
この細菌達を、頻繁に行う石けんでの手洗いやアルコール消毒が、殺してしまうのです。
そう考えると、石けんを使った手洗いをためらってしまいますが、今は目をつぶって新型コロナウイルス感染予防を優先するしかありません。
手荒れでたいへんな子どもたちには、足りない脂肪を補ってあげる工夫をするしかないでしょう。できるだけ化学物質を含まない成分のお薬で・・・。

マスクについて
マスクの効果としてはっきりしているのは、せきやくしゃみ、会話などで体外に吐き出されるウイルスの一部を止めてくれること、です。
また、マスクをすることでウイルスのついた手で、口や鼻を触らない効果があると言われていますが、それが予防にどのくらい効果があるのかははっきりしていません。
「マスクをすることで、病気にかからないようにする効果はない」ということは、かなり浸透してきた知識になっていますので、誤解はないと思います。
でも、マスクの表面には時によってウイルスがついているわけですから、「マスクの表面に触らない」というのは鉄則ですが、そもそも無意識に顔を触りがちな子どもたちにこれを守ってもらうのはかなり難しそうです。
かといって1日に何度もマスクを交換する、というのも現実的ではなく、やはり頻繁に手洗いをするしかなさそうです。

 

参考資料 第14回新型インフルエンザ専門家会議議事録資料 (2011年9月5日)
         新型インフルエンザ対策行動計画(2011年度版)
     首相官邸ホームページ 「インフルエンザ(季節性)対策」
     京都大学環境安全保健機構附属健康科学センター 教授 川村 孝 論文
     手を洗いすぎてはいけない  藤田紘一郎著 光文社新書
     オックスフォード大 Chan KH、他
     道北勤医協  旭川北医院  医師 松崎道幸

 

小学校4~6年生用  

        

中学生用