各学年1時間のカリキュラム(中学校)

2020年7月6日
カテゴリ:その他

しばらく前に、「各学年1時間のカリキュラム(小学校)」を提案しましたが、こちらは中学校バージョンです。
2つのパターンを考えてみました。
1つは、小学校で性教育を受けた経験のある生徒対象のもの。これは、小学校で学習した内容と重複しないか、あるいは小学校での内容を深化させた授業を考えてみました。
2つめは、小学校で性教育を受けなかった生徒対象のもの。これは、小学校で学ぶ内容から3時間分を取り出しました。

パターン1 1年生
思春期に入りかけた時期の中学生には、小学校で学ぶ「生命誕生の仕組み」をより詳しく伝えます。できるだけ画像で、胎児やからだの仕組みをわかりやすく伝えます。大切なことは、一方的に説明して終わり・・・にしないことです。画像で見たことをどう感じたか、何が印象に残ったか、自分の存在をどう感じたか、そういったことをクラス内で交流させることで、学習内容のポイントを押さえ、さらに深く考えてもらいます。
画像を作成するために、次のような書籍を参考にしました。
「驚異の小宇宙 人体」   日本放送出版協会
「生まれる~胎児成長の記録」    講談社
「おなかの赤ちゃん」        講談社
「誕生の詩」            偕成社


パターン1 2年生
性を通した人間関係を考えさせる際、差別や人権についての学習は、欠かすことのできない内容です。性に関わらず人として対等であるという基本の上に、「性を通した豊かなコミュニケーション」が成立するからです。ですから、恋愛について考える前に、差別をうむ誤解を解き、イメージではなく正しい情報を伝える必要があります。
この授業では、今まで子どもたちが「女は○○、男は○○」と思い込んでいた内容を、全員で点検します。
クラスには、多様な個性を持った子どもたちがいます。例えば「女はおとなしい」という思い込みに合わない女の子が、「女はおとなしいなんて、限らないわよ」と否定してくれますし、「男はたくましい」という思い込みについては、「女の子だってたくましいのがいるよなあ」という意見も出てくるでしょう。
なかなか答えが出ないものについては、教師がヒントを与えるだけで、自然に「性別では決められない」という結論が出てきます。
小学校で学習した「多様な性」についても思い出しながら、これまでの日本社会の性差別なども付け加え、未来を作る力を持つ子どもたちが、どのように生きていけばよいのかを考えさせます。

パターン1 3年生
デートDVの授業は、「こんなことをしてはいけない」といった傾向で行われる授業が多いのですが、そういった授業をすると、いくつかの問題が起きます。
一つは、恋愛についてマイナスのイメージが強くなり、いわゆる「問題行動防止」的な内容になってしまうため、恋愛を構築する力に繋がりにくくなる、ということです。授業を受ける子どもたちの中には、そのことを敏感に感じとって、学んだことに対して拒否的な感想を持つ子どももいます。
もう一つは、授業時間の問題です。デートDVの内容を説明するためには、かなりの時間がかかります。50分で授業を終えるためには、どうしても説明の時間が長くなってしまうのです。
こういった問題が起きないよう、デートDVの説明は最小限にして、具体的な会話文を通してデートDVを理解し、「恋愛で大切なこと」を考える時間を取りました。
さらに、展開例をもう一つ提案すれば、後半を恋愛ではなく、普段の友人関係と結びつけることも可能です。授業を受ける子どもたちが、あまり恋愛について興味のない年齢集団の場合など、この展開も有効です。普段の友人関係とデートDVを結びつけ、友達にしてはいけないことは、恋人にもしてはいけない、といった考えることができます。

パターン2 
3時間の授業はいずれも小学校4~6年生の授業として提案したものです。いずれの授業も私は小学校、中学校の両方で実践したことがあります。小学生との授業とは違って、中学生との授業は、子どもたちの知識量が増えているため、正解が出る可能性も多くなりますが、逆にだからこそそれを揺さぶるような発問をすることで、さらに深く理解することができるようになります。
また、逆に子どもたちの発言が多様になり、議論も深まります。
もちろん、中学生には小学生よりさらに詳しい説明や、思考のポイントを提供する必要がありますので、授業時間や子どもたちの実態に合わせて、選択する必要があります。