小学校高学年 皮膚を守るのは「脂(あぶら)」

2021年12月4日
カテゴリ:その他

次のような実験をしてみました。
A.水で10秒間手のひらを合わせて軽くこすりながら水洗いし、3回手を振って水気を切る。
B.石けんを使って5秒間手をこすって洗い、その後5秒間水で流し3回手を振って水気を切る。
C.Bを行った5分後にAを行う
どんな結果になるか、時間をおいて5回ほど繰り返して確かめてみました。
Aを行ったあとの手のひらには、水滴が残っています。特に手の皺の上には丸くなった水滴がいくつ      も付いていました。

 

 

 

 

 

Bでは、水分は手のひら全体にべったりとくっつくようにつき、水滴はあまりみられませんでした。
そして5分後のCは、Aと同じ結果になりました。
なぜこんな結果になるのだろうか?それは、手のひらにはからだから分泌された皮脂が付いていて、水洗いだけではその皮脂は落ちることなくついているので、皮脂に囲まれて水が丸くなるのです。
でも、石けんを使うとその皮脂が落ちてしまうため、水は水滴にならず、手のひら全体に広がったようにくっつきます。
しかし一度石けんで落ちた皮脂も、Cのようにしばらくすると再度手のひらに分泌され、また水滴をつくるようになります。
コロナ感染症の影響で、頻繁にアルコール消毒をする子ども達の中には、この実験と同じように皮膚を守っている皮脂が剥ぎ取られ、カサカサになっている子も増えています。その体験を生かした学習を考えてみました。
元になる実験は、手のひらをアルコールで拭き、中性洗剤を加えた水を1滴手のひらに垂らす、というものなのですが、アルコール消毒はアレルギー反応がある場合もあるので、誰でも体験できる石けん手洗いでやってみました。

    教材①

T:今日は手洗いの実験をしてみたいと思います。保健室に水屋が3つあるので、3人手洗いしてく
  れる人はいないかな。         

S:はい。手洗いだよね、やります。(3人を選ぶ)
T:では、これから私が言うとおりに手を洗ってくださいね。まず最初は水を流して手のひらを合わせて軽くこすってください。3人一緒にやるよ。では、はじめ。1,2,3・・・(10までカウントする)。終わったら、軽く3回手を振って水気を切ってみて。その手のひらをみんなにみせてください。水はどうなっている?
S:あんまりついていない
S:皺の上にたくさん水が付いている
T:その水はどんな形をしていますか?
S:丸い
S:楕円もある
S:なんかコロコロした感じ
T:なるほど。では3人はまた水屋に移動してください。今度は今と違ったことをしてみますよ。
最初に水屋にある石けんを手に取って、5、数える間手のひらを軽くこすって洗います。その後5、数える間に水で石けんを流して、さっきと同じ3回手を振って水気を切りますよ。では、はじめ(指示通りに行う)。さて、今度はどうなった?みんなにみせてください。
S:あれ、さっきと違う。水滴がない。
S:水が手全体に付いているよ。
S:水がべったり付いている
T:3人、ありがとう。最後にもう1回協力してね。手を拭いていいですよ。さて、最初に水で洗ったとき、手についた水は小さな水滴になって残っていましたね。でも石けんで洗うと、手全体に水が広がって濡れてしまっていました。私たちの手のひらには、からだの中から出てきたあぶらがついているんです。あぶらは水をはじきますよね。だから、水洗いだけだと手のひらに付いているあぶらにはじかれて、水は水滴になります。でも石けんを使うと、石けんはあぶらを溶かす作用があるので、手のひらのあぶらが溶けて、手のひら全体に水が付いてしまいます。ここで、皆さんに考えてもらいたいのですが、なぜ手のひらにあぶらがついているのでしょうか。このあぶらの役割はなんだろう。
S:水をはじく役割
T:水をはじいて、どうするの?
S:う~ん、わからない。
T:みんな経験あるはずだよ。手のひらのあぶらもとれてしまって、長い時間水分に浸かっている経験だよ。夕べも経験したんじゃないかな。
S:え~っ、なにそれ。わかんないよ。
S:そんな体験したかな。
S:わかった、お風呂!
S:あ、そうか。お湯だからあぶらがおちて、お湯に浸かっている!
S:手がしわしわになる!!
T:ほら、夕べも体験したでしょ。長い時間温かいお湯に浸かっていると、指先などがふやけてしわしわになるよね。(教材①)これは、おなかの中の赤ちゃんの写真です。おなかの中の赤ちゃんは、「羊水」と呼ばれるぬるま湯の中に9か月以上浸かっているので、皮膚がふやけないようこんなふうにからだにあぶらがついていて、皮膚を守っているんです。
では、お湯に浸かっていないときにあぶらがなかったらどうなるだろう。
何度も石けんで手洗いしたときとか、何度もアルコール消毒をしたときも同じ事が起きるよ。そんな時の手はどんな感じ?
S:カサカサする
S:パリパリして、つっぱったみたいになる
S:アトピーがひどくなって、かゆくなる
S:ひどいと皮がむけるよ
T:皮がむけるの?それは大変だね。アトピーの人には、みんなで配慮してあげようよ。他には?
S:皮膚が乾燥する
T:ということは、あぶらは皮膚が乾燥しないよう・・・
S:守っている
T:そういうことになるね。それは、手のひらだけではないよね。からだを覆っている全ての皮膚があぶらに覆われていて、守られているんです。では、最後にもう一回3人に手洗いしてもらおうかな。さっき石けんで洗ったので、皮膚の脂はとれてしまっていました。あれから5分くらいたったかな。では、また10数えるので水で手洗いして、3回水切りしてください。(10カウントする)さて、手をみせてください。
S:あれ、また水滴が出来てる
S:またあぶらがついたんだ
S:すごい、元にもどった
T:そうです。一度あぶらが落ちても、またからだの中から分泌して、皮膚を守っているんです。
S:なんか、安心する
S:でも、何度も繰り返すとカサカサのままだよね。
T:時間がたてばちゃんとあぶらが出てくるので、大丈夫だよ。でも、皮膚がむけたりするようなひどいときは、保健室に来てくださいね。保健室では、できるだけ添加物の少ない薬、例えば白色ワセリンとかアロエ軟膏などを塗っています。添加物の多いものを使いすぎると、かえって皮膚が傷ついてしまうので気をつけましょう。