未だに「うがい論争」 

2020年9月13日

性の学習に「初経指導」(小学校5年 女子対象)「様々な性」(小学校5年)「恋愛と人間としての能力」(中学生)「恋愛と自立」(中学生)をアップしました。

友人から中日新聞の記事が送られてきました。
愛知県一宮市の保育園で「うがい」の賛否論争が起きている、というものでした。

この記事を読んで気になったことが4つあります。 
1つめは「感染症予防の基本は手洗い、うがい」と保護者が思っている、ということです。
何度も書いていますが、国は、コロナ感染症の予防行為として「うがい」を勧めてはいません。「うがい」の「う」の字もありません。もし本当に「感染症予防の基本は手洗い、うがい」なのであれば、なぜ国はコロナ感染症の予防として、「うがい」を勧めないのでしょうか。もちろん、勧めないのは効果が証明できないからです。
さらに今は、インフルエンザの予防行為からも「うがい」は削除されており、さらに「インフルエンザを予防する効果については科学的に証明されていません」と様々なものに明記しています。
この文言が法律に記載されるようになったのは2011年の改正以降ですから、10年前に「うがい」の効果は「エビデンス(科学的証拠)がない」と国が認定したことになります。
この情報が、多くの国民には伝わっていないのです。
前述の保護者の方も、きっと小さい頃から「感染症予防の基本は手洗い、うがい」と教わってきたのでしょう。それが修正されないままだということです。

2つめは「うがい」を推奨するお医者さん達の理論です。
お一人は「うがいでの(ウイルスの)飛散を気にするなら、手洗いも同じになってしまう」とおっしゃっています。
「・・・ん?それって・・・変」お気づきですよね。手洗いはそのほとんどが石けんを使います。石けんの中の合成界面活性剤は、ウイルスを不活化することがはっきりしていますから、手洗い後のウイルスは感染力を持っていません。
でも「うがい」は、ウイルスが「生きたまま大量に」吐き出されることになり、感染力を持っています。従って「うがい」と手洗いが同じ、というのは間違いです。このことは、他のお医者さんに、間違っていないか確認してもらいました。
今回の新型コロナウイルス感染症を「うがい」で予防できる、という証明もありません。
もうお一人うがいを勧める方の言うように「うがいで一部のウイルスを洗い流せる」としても、一部でしかないわけで、どれくらい「病気の予防」になるかは、わからないままです。また、ウイルスは喉以外にもたくさんいるわけで、「喉の一部を流せる」ことと「病気を予防できる」ことは、必ずしも同じとは限りません。

3つめは、厚労省結核感染課の「うがいで感染が拡大したとの報告はない」という説明。
ではお聞きしますが、感染が広がった例で「これは飛沫感染で広がりました」とか「これは接触感染でうつったものです」といった報告があるのでしょうか。
そんな報告はあり得ないですよね。だって、どんな方法で感染が広がったかなんて、どうやって証明するのでしょうか。ウイルスに「どんな方法でやってきたか」書いてあるはずもなく、証明はできません。あくまでウイルスの特性等を考えた上で「この方法なら他人に感染する」という意味で、飛沫や接触で「感染する」と考えられているだけです。だから、うがいだけでなく、飛沫も接触も「感染の報告」はできないはずです。
同様に考えれば、飛沫やエアロゾルで感染するなら、「うがいも十分危険」であることが考えられるはずです。「そんなこと、エビデンスなんかなくたって、ちょっと想像すればわかるでしょ!」と私に言ったお医者さんもいます。
もちろんこの点も、間違っていないか他のお医者さんに確認してもらいました。

4つめ、さらには、素人の私が考えて疑問に思ったことを、なぜ新聞は確認しなかったのでしょうか。ただ単に言い分だけを載せて、後は修正も訂正もしない・・・。そんな対応のマスコミに、今までもたくさん出会いました。言った方が勝ち、なのでしょうか。

細かく考えると、もっともっと疑問に思うことがたくさんあり、書き切れません。その、考えれば考えるほど浮かんでくる矛盾に気分が落ち込みますが、やはり私たち養護教員は、子どもの方を向きましょう。子どもたちにとって大切なことを、きちんと伝えましょう。誤解を解いておきましょう。それが、学校教育や学校保健の果たすべきことではないでしょうか。

 

京都 大原 実行院の紫式部