書籍紹介 「健康帝国 ナチス」

2025年8月10日

カテゴリー「ショート指導」に「小学校低学年 それはどこの病気?」「小学校高学年 牛乳飲んだら、背が伸びる?」をUPしました。

このページでも、また様々な教材や学習の中でも「健康だけに価値があるのではない」という主張を何度も繰り返してきました。
その考えの一助になった書籍を紹介します。
ロバート・N・プロクター著 宮崎尊訳 「健康帝国ナチス」(草思社)
実は、ナチス党は国民(ゲルマン民族)のために、「健康政策」と呼ばれるものを積極的に実施していたのです。
しかしその根本は、あくまで国の発展、ナチス党の発展、民族浄化、のためでした。

ナチスのスローガンに次のようなものがあります。
「身体は国家のもの!
 身体は総統のもの!
 健康は義務である!
 食事は自分だけのものではない!」

パンは全粒粉を勧め、人工的な添加物を排除し、野草でお茶を作り、ハーブと自然薬を推奨する。
もちろん、この時代の科学や医学はまだまだ未発達な部分も多かったものの、当時のドイツはそれでも最先端の知識を持ち合わせ、世界をリードしていた国でした。
これらの施策と優生論を背景に、どんなことが行われたのかは、皆さんの知るとおりです。

人間のからだや健康は、様々な形で政治利用されてきました。
しかしそれは、政治的な理由や個人の権利を踏みにじる形で行われるべきではありません。
あくまでそれは科学的なエビデンスに従い、人権を基本にして行われるべきです。
なぜなら、からだは私たちの最大のプライバシーだからです。
選ぶのは自分自身であり、その選択は科学的な根拠に基づいて行われなければなりません。

科学的な根拠をないがしろにする社会は、行き先を間違えます。
そのことを、ぜひ子どもたちに伝えたいものです。

水不足の中、青々とした稲。農家の皆さんの努力の賜です。