月経痛を訴える時は・・・
月経に関連する様々な症状は、以前でしたら「我慢しなさい」や「みんな同じよ」といった言い方で、簡単に片付けられてきました。でも今は、その仕組みや症状の多様さが明らかになり、対処方法もわかってきました。
ですから「我慢」や「みんな同じ」で片付けないで、できるだけ一人一人の辛さにつきあってあげたいものです。
さらに新型コロナ感染症の流行により「生理の貧困」が問題になったり、最近は「夜明けのすべて」という小説が上白石萌音さんと松村北斗さんの主演で映画化されたりと、少しずつ共感や理解を得られるようになってきました。
まずは、月経痛を訴える本人の辛さを、少しでも和らげる対処法を、一緒に考えていきましょう。
S:ミルミル先生、おなかが痛いです。
T:おやおや、いつも元気な〇〇さんが、どうした?顔色も悪いよね。まずはここに座って。
S:昨日からずうっと痛くて・・・。我慢していたんだけど、ちょっと辛すぎて。
T:えっ、昨日から我慢してたの?おなかの調子が悪い?(こっそり耳打ちして)それとも生理中?
S:(小声で)生理中です。
T:下痢とか、吐き気はない?おなかのどこが痛い?
S:それはないです。多分生理痛。おなかの下の方が痛いから。
T:そうか。じゃあ、ちょっと横になろうか。顔色も悪いし、次の時間は休んだ方がいいね。(担任に連絡)
(ここまでの問診は、かなり省略しています。本人から「生理痛」と言われても、それ以外の原因がないか、確認はしっかり必要です)
(休み時間終了。保健室内には、他の生徒はいなくなりました)
T:いつもひどいの?生理痛。
S:前はそれほどではなかったんだけど、最近すごくひどくなって。
T:そうなんだ。辛かったでしょ。顔色悪くなるまで我慢したんだものね。よく頑張った。これからは辛いときは辛いって言っていいからね。いつでも保健室いらっしゃい。
S:(ほっとした表情でうなづく)
T:はい、これ湯たんぽ。暖めると痛みが和らぐよ。おなかにあててみて。
(保健室には、電気ポットと湯たんぽが準備してあります。湯たんぽはふかふかの熊さんのぬいぐるみが着いた布で覆ってあるので、子どもたちはニコニコしながら抱きしめています。
S:あったか~い
T:暖まると痛みが軽くなってくるからね。安心してね。少し休もうか。
(痛みが落ち着くまで、ゆっくり休ませます。話をするのはその後で)
T:どう?すこし痛みは軽くなった?
S:うん、だいぶよくなった。
T:そうか、よかった。さっきまで本当に辛そうだったものね。生理の時はおなかの痛み以外になにかいつもと違うことはない?例えば、イライラするとか、怒りっぽくなったり、めまいがしたり、とか。
S:ある。イライラするし、ボーッとして、授業とか集中できないときがある。
T:そうか。それ、生理の前におきやすいでしょう。それはね、月経前症候群って、ちょっと難しい名前がついているけれど、それも生理と関係あるんだよ。生理が起きる前は、血液の中に流れているホルモンの量や種類が変わるんだって。その変化が、いろんな症状を引き起こすことがあるんだよ。だから、イライラもボーッとするのも〇〇さんのせいじゃないからね。からだの仕組みがそうなっているだけなんだよ。
S:そうなんだ。今までいらいらして八つ当たりすると、その後すごく落ち込んでたから、でも少しホッとした。
T:そうだったんだ。イライラするときは、なにか他のことで気を紛らわせたり、つい怒ったときは、ちゃんと自分の状況を説明するといいかもね。
S:うん、やってみる。
T:生理痛も、子宮が縮んだり伸びたりして、血液や粘膜をからだの外に押し出そうと動くことで起きるんだよ。マヨネーズのチューブを搾るみたいに動くのよね。
S:フフ、マヨネーズは面白い。おなかの中のマヨネーズだと思えばいいんだ。
T:そうそう。でもあまりひどいときは、薬を飲んだり、他の方法もあるから、一度おうちの人に相談してみよう。自分で話せる?
S:うん、話してみる。
T:そうだね。話をした結果もよかったら教えてくれるかな。何か私も力になれるかもしれないよ。
S:うん。
月経痛の話をしている中で、家庭で様々な問題が起きていることが分かった事例もあります。特に以前はひどくなかったのに急に痛みがひどくなった場合は注意が必要かもしれません。ストレスを感じる脳の部分と、痛みを感じる脳の部分がすぐ近くにあるため、影響を受けやすいのだそうです。じっくりと話を聞く事の大切さを感じた事例でした。
今の保健室は1日中忙しく、じっくり話を聞く時間が取れない場合もありますが、それでも可能な限り時間をとって子どもたちの思いを聞く姿勢を持ちたいものです。