小学校４年保健　命をつくるしくみ

　小学校４年生は、「保健体育」の教科の中に、「第二次性徴」を取り扱う時間があります。そこで、この時間に「からだの学習」の方法を活かしてみました。からだのしくみを先生が説明するのではなく、子どもたちが自分で考えながら、学んでいくようなやり方です。

　この時間では、漢字の意味を考えることで、その器官の役割や形を子どもたちに考えてもらいながら授業を進めていきます。またグループに分けて、「子」「管」「巣」「宮」の４つの漢字について、形と役割を考え、それを発表してもらう形にしてもいいと思います。「宮」は３年生で学習する漢字ですが、「管」と「巣」は４年生で学習する漢字ですから、国語での学習が終わってから実施するとよいでしょう。

　「性の学習をすすめるために」のところで説明しましたが、人間のからだはとても見事に、合理的（うまい具合）にできています。
　この時間の学習で、子どもたちにそんなからだのしくみを伝えましょう。教科としての学びだけでなく、自分のからだを理解し、これからの人生でいかせる知識になるように、授業を構成してみましょう。その際、指導者が「からだってすごいでしょ？」と子どもたちに押しつけるのは止めましょう。子ども自身が自分の感性で捉えたものを大切にすることで「生きて働く認識」や「観」が育まれるのです。

この授業で子どもたちに伝えるからだのしくみは、次のようなものです。

　★男女のからだは、子宮を除けば、ほぼ同じしくみになっている。基本は男女同じである。

　★「子」という漢字には「慈しむ」「愛する」という意味がある。（漢和語源辞典）

　★卵管の内部には、ヒダがあって、自分では移動できない卵子を、ヒダが動くことによって子宮ま
　　で運んでいく。

　★精管の途中には小さな袋（精嚢）があり、ここに精子が溜めておかれる。いっぱい溜まると、
　　精子は分解されてなくなっていくので、溜まりすぎてしまうことはない。
　　　　注；これは、誤解している男性がたくさんいるので、ぜひ付け加えておきたい内容

　★尿道の中はおしっこも通る。おしっこと精子が混じってしまわないように、尿道の途中には管の
　　中を掃除してくれる水のようなものを溜めておく場所（カウパー腺、名前を覚えさせる必要はな
　　い）があり、精子が通る前に管の中を掃除してくれる。

　★卵巣の中には、大きかったり小さかったり、いろいろな大きさの卵子のもとが入っていて、
　　一人前に成長すると、卵巣から飛び出すしくみになっている。

　★精巣の中には、精子を作る管がたくさん入っている。その管を１本につなぐと、１００ｍ以上に
　　なる。
　　　　注；精巣の中の精細菅の長さは、個人差やデータの違いがあり、一定ではない。ただ、いく
　　　　　　つかのデータを参考にすると、精巣１つについて最も少ない数字が１００ｍなので、
　　　　　　子どもたちには「１００ｍ以上」と表現して説明する。

　★「宮」はきっと子どもたちの身の回りにあるのではないだろうか。神社のお宮を想像してみよ
　　う。中に入っているのは、神社にとって大切なもの。子宮は、大切なものを入れているという
　　意味の「宮」と、「大切なもの」という意味の「子」が二つ使われているくらいだから、子宮に
　　入っている命、つまり皆さんは、「大切」という意味が２つ重なった存在だということです。

　　　　　　　教材の作り方
　　材料は身近にある紙粘土、ビニール袋、ボール、ホームセンターで売っているホース等です。

　　大きな卵巣と精巣の外枠は、紙粘土で作ります。下の写真はピンクの紙粘土を使い、直径６～７
　　センチのボール（ビニールボール、軟式テニスボールなど身近なもので）の外側に紙粘土をはり
　　つけ、乾いてからカッターで中央を切り開きました。卵巣も精巣も同じように作ります。

　　
　　卵巣の卵母細胞は、綿球で作ります。保健室で使っているサイズだけでなく、いろいろな大きさ
　　を作り、成熟していく様々な段階を表現します。

 

        精巣の中には、たこ糸を巻いたものを入れます。写真のたこ糸は２５ｍありますが、必ずこの
　　長さ、というわけではありません。ただ短すぎると、精細菅の長さが実感しにくくなります。
　　紙粘土の外枠に入れたままたこ糸を引き出せるよう、少し外枠に切り込みを入れておくと、
　　壊れにくいでしょう。

 

        女性のパーツを組み立てた状態。これは大きな卵巣、精巣とは別に作ります。
　　卵管はホームセンターで売っている切り売りのホース。色もいろいろあるので、お好きなもの
　　を。膣もホースです。
　　透明な部分はビニール袋で作りました。中央が子宮ですが、その両側にあるのは、紙粘土で作っ
　　た卵巣で、アルミ線を差し込み、子宮にくっつけました。

 

　　男性のパーツを組み立てた状態。
　　赤いホースは太いので、尿道（先端はペニス）。途中に切り込みが入っていて、そこに細い
　　ホースが２本差し込んであります。細いホースは精管です。途中についている小さな袋は、精嚢
　　です。そして先端に紙粘土でできた精巣がついていますが、この精巣は取り外しできます。