小・中どちらも おなかの中で育つ命
この授業は、使用する用語や授業者の発問のしかた、教材の
提示方法によって、小学校4年生から中学校1年生まで実施
することができます。小学校4年生でも中学校1年生でも、
共に保健体育の二次性徴の学習の後に、発展として位置づけ
てみてください。
この授業で焦点化されているのは、「母体内で育つ自分の姿」
です。今、生きている自分が、命を維持するために行ってい
る行為を「おなかの中ではどうやっていたの?」という問い
から授業は始まります。ですから、授業を受ける子どもたち
の視点は、あくまで「胎児だった頃の自分」です。そうする
ことで、単に説明を聞く他人事のような捉えではなく、自分
自身のこととして受け止めることができるようにしてみました。
もちろん、単に説明が続くような授業にはなっていません。
「からだの学習」ですから・・・。
小学校4年生でも、「食べる」「呼吸する」「おしっこ」「うんこ」「寝る」「服を着る」「運動する」の7つについて、子どもたちはいろいろ予想しますから、中学生であればさらに気づきのある予想がでてきます。つまり、この7つの項目は、子どもたちにとって十分な「予測可能性がある」ということです。ただし、最後の「運動する」は、なくても、授業の流れの中で自然に出てきますので、削除してもかまいません。「寝る」のところで子どもたちはちゃんと気づいてくれます。
授業は、子どもたちの予想を出し合った後に、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月と胎児の成長を追っていくことで、答えが出るようになっています。授業者の発問は、ほとんどが子どもたちに対して気づきのポイントとなることを疑問形で投げかけ、写真や模型を使って胎児の様子をみながら考えていけば、答えがみつかる、といった具合に進んでいきます。子どもたちが自ら検討して結論を導くのに必要な情報を、授業者が提供すればいいのです。授業者の一方的な説明は、ほとんどありません。
小学校4年生で実施したときの子どもたちの感想をいくつか紹介します。性の学習をはじめとした保健教育全般で使った資料や学習プリントは、子ども一人一人のファイルを準備して、その中に全て綴じ込んでおくようにしました。性の学習が終了すると授業のまとめのプリントを作成し、ファイルに綴じて家庭に持ち帰らせます。まとめのプリントには、できるだけ多様な感想が載るように、そして1年間で性の学習以外の保健教育も含めて、全員1回は感想が載るように工夫しました。
また、書かれた感想には、必ずコメントを書いて返しますが、場合によってはまとめのプリントを配布する際に、担任から学級全体にフォローしてもらった上で配布することもあります。
・今日の学習は、赤ちゃんの勉強でした。でも、赤ちゃんが呼吸をしないし、食事もしないとはびっくりしました。お母さんのからだの中で、おしっこをしているほうが、もっとびっくりしました。でも、ぼくもこういう動作をやって生まれてきたから、すごいと思いました。やっぱり赤ちゃんも人間の大人と、だいたい同じなんだな、と思いました。
・ぼくは赤ちゃんはおなかの中でおしっこをしていたことをはじめてわかって、びっくりしました。あと、へその緒を通って、酸素が来ているから、呼吸はしていないということも、はじめてわかりました。産まれたときは、声を出さないと死んでしまうこともあるので、ぼくは声を出せてよかったと思いました。
・毛あなから油がでるなんて、びっくりしました。あと、おなかの中でおしっこをするとは、思いませんでした。羊水が6時間毎に入れかわるとき、どんなふうにして入れかわるのか、気になりました。ぼくたちのからだは、とてもすごいと思いました。
・自分が生きるために、いろんなことをしているのが、すごいと思った。おなかの中にいた時のきおくがないのが、不思議に思えた。今の自分よりも倍、頭がいいと思った。おなかの中にいたときくらい努力したい。
・ちょっとびっくりすることもありました。おなかの中にいるときは、いろんなことをしていて、すごいと思いました。おなかの中にいても、練習とか、いろいろやっていることがわかりました。へその緒はすごいと思いました。わたしはこんなふうに産まれてきたなんて、今日はじめてわかりました。
教材の作り方
授業で使用する写真は、次の書籍から使用しました。
3ヶ月の胎児の写真 ・・・・・「生まれる」P81
6ヶ月の胎児の写真・・・・・「おなかの赤ちゃん」 P49
油がついた胎児の写真・・・・・「おなかの赤ちゃん」 P38
指しゃぶりをしている胎児の写真・・・・・「おなかの赤ちゃん」 P48
9ヶ月の胎児の写真・・・・・「おなかの赤ちゃん」 P52~53
誕生の写真・・・・・「誕生の詩」 P14
~出典~
「おなかの赤ちゃん」 シェイラ・キッチンジャー文 レナート・ニールソン写真
(講談社)
「生まれる~胎児成長の記録」 レナート・ニールソン写真 松山 栄吉訳 (講談社)
「誕生の詩~あかちゃんのはじめての時間」 トーマス・ベリイマン写真、文 (偕成社)
水に浮かんだ人形
市販のキューピー人形の中に、適当な重りを入れて、ビニール袋に入れた水に入れ、ちょうど中央に浮かぶように調整する。