小学校 土踏まずの役割

2019年11月26日
カテゴリ:その他

このショート指導は、遠足時に「足が痛い」と言ったA君との会話から、「土踏まず」や「扁平足」について知ってもらおうと考えて実施したものです。
「土踏まず」は、人間が二足歩行をするために発達させた独特の特徴です。でも、長時間外で走り回って遊ぶ子どもの姿があまり見られなくなった現在では、十分発達する機会が失われている、という指摘もあります。でも、本当は素晴らしい働きの一つなんです。
この実践は、試行錯誤の繰り返しでした。先行実践もあるので、まず同じように指導してみました。
でも、子どもたちの反応はイマイチで、「すとん!」と腑に落ちた様子が見られませんでした。
そこで、いろいろと修正し、考え、悩み・・・。未だにこれでいいのか自信がありませんが、ぜひみなさんに試して頂きたいと考えています。
ポイントは、足裏がアーチになっていることで、足裏にかかる力を跳ね返すことができる、ということです。ここでは、例えば赤ちゃんから次第に土踏まずが形成されていくことなどは、学びの要素として盛り込まれてはいません。「運動で発達する」ことを簡単に言葉で説明しているだけで、あくまでアーチになっていることの意味を理解してもらうための指導です。対象は小学生です。2学期の身長体重測定の後、ちょうど裸足になっているタイミングで実施しました。

T:では、からだの勉強をはじめていいですか?
S:(静かになって)いいです。
T:では、みなさん、丸くなって座ってください。自分の足の裏、見えますか?
S:見えます。
T:では、ここにも足の裏の絵(①②)が2枚あります。どちらかが人間で、どちらかがチンパンジーです。
S:先生、チンパンジーの足なの?手じゃないの?
T:手は前だよね。これは後の方、歩くときに使う足の裏の絵です。どっちがどっちだろうね。
S:(一斉に自分の足を見たり、隣の児童の足をみたりしている)わかった!
T:じゃ、Aさん、人間の足はどっち?
A:①です。
T:どうしてそう思ったの?
A:ぼくの足と同じだから。
T:みなさん、どう?皆さんの足も①と同じですか?
S:(「同じです」とか頷いたりしている)
T:正解!でも、人間の足とチンパンジーの足は、ずいぶん違う形をしているよね。どこが違うかな。
S:指の付き方が違う。
S:指が大きい。
S:人間の足は細長い。
S:人間の足に引っ込んでいる所がある。
T:ああ、なるほど。この引っ込んでいる所は何だろう。
S:(だれもわからない様子で、反応がない)
T:みんなにはある?引っ込み。
S:(自分の足を見ている)ある。
S:引っ込んでる。
S:あまり引っ込んでないけど、ちょっとはある。
T:そうか、人によって引っ込みの程度は違うみたいだけど、とりあえずみんなにあるみたいだね。この引っ込んだ部分は、名前を「土踏まず」と言います(カードを貼る)。土を踏まないんだって。つまり地面に着かないようにわざわざそうなっているということ。
S:(ちょっと間を置いて)え、なんで?
S:土を踏まないなら、いらないんじゃない?
S:なぜあるの?
T:なぜだろうね。歩くときに、足の裏はちゃんと着いた方がいいような気がするよね。その方がしっかり歩けそうだものね。
S:(頷いている)
T:じゃあ、ちょっとした実験をしてみましょう。(③を見せて)これを足だとして、土踏まずがあるみんなの足は、こんな(③をアーチ型にする)感じかな。ここに、このちょっと重いボール(④)を落として見ます。どうなるかな。(④を何度か落とす)どうなった?
S:ボールがはねる。
S:下敷きがボヨン!となった。
T:下敷きが跳ね返したのかな?
S:うん。
T:そうか。もし土踏まずがなくて、平らだったら?
S:跳ね返らない。
S:ガーン!って当たるかも。
T:やってみよう。(平らにした③にボールを落とす)
S:やっぱり・・・。
S:なんか、痛そう。
T:土踏まずの役割が何となくわかったかな。じゃあ、聞いていい?土踏まずは、どんな役割をしているのだろう。
S:跳ね返す役割。
S:何かぶつかったときに、跳ね返す。
T:ぶつかったときだけかな?みんなが普段普通に歩いていると、みんなの足には体重の1,2倍の重さが加わるんだって。体重30キロの人なら、36キロの重さだよ。
S:え~っ、そんなに?
S:じゃあ、歩いているときにも跳ね返しているんだ。
S:36キロを?土踏まずで?こんなところで?
T:高さ80センチから飛び降りると、体重の3倍の重さがかかる。
S:え~!!(全員の大きな声)
T:自分と同じ体重の人、3人が、足に乗ったのと同じ重さだよね。でもみんな80センチの高さなんて、何ともなくてとんでるよね。
S:(頷く)
T:土踏まずのおかげで、何ともなくてすんでる、ということになるよね。どう思う?
S:はじめて知った。
S:すごいね、土踏まずって。
S:そんなに重さがかかるなんてびっくりした。
S:土踏まずさまさまだ。
S:土踏まずがあってよかった。
S:土踏まず、ありがとう!
T:でもね、土踏まずは、みんなが足を使って活発に運動をすることで発達するところなんです。だから、人によっては土踏まずが小さい人もいる。土踏まずが小さい足を「扁平足」といいます。「扁平足」の人は、長い時間歩いたり運動したりすると、足が痛むことがあります。でも、大概は少し休むと治るから大丈夫です。
S:先生、高いところから飛び降りても大丈夫?
T:高さによります。3メートル、なんて高さは、どんなに土踏まずが頑張っても、怪我するかもしれないね。この前、みんな骨を割ってみたよね。(ほけんだより「骨ってかたい・・・でも」)
S:そうだ、硬かったけど、割れたよ。
T:そうだよね。折れたら困るものね。でも、普通の生活の中では、歩くときも、走るときも、ちょっとした高さから飛び降りるときも、土踏まずがみんなの足を守ってくれている、ということだよ。土踏まずが小さいなあ、と思っている人は、いっぱい運動すると、土踏まずができていくそうですよ。できたらこれからの生活でも、少し土踏まずの役割を思い出してくれるといいかな。では、今日の勉強はこれでおしまいです。

普段は、ショート指導で文章を書かせる、ということはあまりしないのですが、このときは数人に書いてもらいました。
・一度だれかに、「扁平足で高いところから跳ぶと、足を痛めるから危ないよ」といわれたことがある。その時はなぜなのかわからなかたけど、今日はわかった。
・ぼくの体重を3倍にすると、こんなに重くなるなんて、はじめてわかった。びっくりした。重いけど、土踏まずさん、よろしくお願いします。(この子は、一斉指導の後、友達を2人背負って、「3倍の重さ」を確かめようとしたそうです)
・あんな重さがかかっても骨が折れないのは、信じられない。ちょっと引っ込んでるだけなのにな。

教材は・・・
①人間の足型(ネットで取れます)   
②チンパンジーの足形(これもネットで)   

③下敷きを人間の足形に切り取ったもの(実物大でなくても、見やすい大きさで作る)    
④紙粘土で作った丸いボール型のもの(軽量紙粘土でないもので製作)