中学校 心臓の動きとAED

2023年5月16日
カテゴリ:ショート指導

中学校の「保健体育」の教科書には、心肺蘇生法と一緒にAEDの説明が載っています。
心肺蘇生法と同様、AEDの使い方の説明はあるものの、それがどんな仕組みで心臓に働きかけるのかは書かれていません。
そこで、ちょっとした動作を通して心臓の動きを学ぶと同時に、AEDがなぜ役に立つのかを理解できるようにしました。
「保健体育」の授業で心肺蘇生法を学習した後でもいいですし、学校によっては外部講師を招いての心肺蘇生法講習をすることもあるでしょうから、その後でもいいでしょう。
教科書では学習しない、もう一歩踏み込んだ内容を学習することで、AEDの使用方法理解はもちろん、普段から心臓震盪事故を避けようとする気持ちも育まれるのではないでしょうか。

参考資料 「好きになる生理学」 田中越郎著  講談社サイエンティフィック

 

T:先週、心肺蘇生法講習がありましたよね。皆さん、いざというときにできそうですか?
S:う~ん、無理かも・・・
S:やってはみるけど、自信がない。
S:その場になれば、何とかできると思う。
T:1回講習を受けたらもう大丈夫、という訳にはいかないかもしれませんよね。そういう人は、皆さんの身の回りにAEDが備えられている場所がたくさんあるはずですから、AEDを見たときに思い出してみる、というのもいいかもしれませんね。
ところでAEDは、心臓に電気ショックを与えて心臓を正常に動かす道具ですが、なぜ電気ショックで心臓が正常に動くんでしょう。
S:止まってた心臓が、びっくりして動き出す。
S:よくわからない
T:では、今日は心臓の話です。そもそも心臓は、たくさんの筋肉でできていて、それが動いて血液を押し出しています。今日は皆さんに心臓の筋肉になってもらおうかな。いいですか。では、私がホイッスルを吹いたら右手を挙げてください。では、(ホイッスルを吹く)
S:(全員で右手を挙げる)
T:すごい、ぴったり揃ったね。素晴らしい心臓だ。では次のホイッスルで左手を挙げます。(ホイッスルを吹く)。
S:(全員で左手を挙げる)
T:いいですね。健康な心臓ですね。これを右手、左手の順番で、ホイッスルに合わせて繰り返しますよ。準備はいいですか。では(ホイッスルを何度か吹く)
S:(右手、左手と順番に上げていく)
T:ありがとう。ばっちり合ってましたよ。これが、正常なときの心臓の動きです。つまり、心臓の筋肉は、合図に合わせて同じように揃えた動きをすることで、血液を押し出しているのです。ところが、笛を吹いても筋肉の皆さんが勝手に動いたらどうでしょう。やってみましょう。わたしがさっきと同じようにホイッスルを吹きますが、皆さんはそれを無視して勝手に左右の手を上げてくださいね。では、いきますよ。(ホイッスルを何度か吹く)
S:(勝手にバラバラと動く)
T:はい、ありがとう。心臓の筋肉が今のような状態になってしまったときに、いよいよAEDの出番です。AEDで強い電流を流すことで、勝手に動いていた筋肉が、もとのように揃って動き始めるのです。そうだな、皆さんだったら担任の△△先生から大きな声で「こら~、何やってるんだ!」って怒られるのと同じかな。
S:(みんなで担任の方を見て笑いが起きる)
T:さて、まとめてみましょうか。心臓にはいつも弱~い電気が流れていて、その電気信号に合わせて、つまりホイッスルの役割だよね、そのホイッスルに合わせて筋肉が一定の動きをすることで、正常に働いているのです。ところが何らかの原因で、筋肉が勝手に動き出してしまうと、血液を正常に送り出せなくなってしまいます。そんなときに、AEDを使って普段よりずっと強い電流を流すことで、もう一度心臓に強い合図を送って、筋肉が揃って正常な動きを取り戻すことができるわけです。

どうですか?心臓とAEDの仕組み、わかりました?
S:すごくよくわかった。面白かった。
S:心臓に電気が流れているなんて知らなかった。でも、だからAEDで強い電気を流すんだ。
S:心電図検査の意味もわかった。

T:皆さんのように健康な人なら、AEDが必要になることはほんどないのですが、例外があります。心臓のすぐ近くに、例えば全力で投げたボールが当たったり、非常に強い力で胸を打ったりすると、それがショックになって心臓の筋肉の動きがバラバラになってしまい、場合によっては死んでしまうこともあります。そういった死亡事故も起きているので、皆さんも十分気をつけてくださいね。