「観」を育む

2018年6月27日
カテゴリ:理論編

 さて「生きて働く認識」を育むべく、教材を作り、実践を重ねる内に、ふとあることに気がつきました。
 たくさんの「からだの学習」を繰り返していくと、子どもたちは明らかに変化していきます。目に見える形で歯みがきをするようになったり、おやつの内容を選ぶようになったりもしますが、それ以上に、からだや命についての見方、「観」が変化していくのです。

 「観」にはいろいろなものがあります。「からだ観」「生命観」「病気観」「健康観」・・・etc。

 当然のことですが、自分のからだや命を大切だと思っている子どもは、からだや命を粗末にはしません。そう考えると、「観」はわたしたちの生き方を決定づける、大切な要素だとも言えます。だから、できるだけ偏りのない様々な視点からの「観」を形成する必要があります。

 例えば、わたしたちは一生の間、どのくらいの期間「病気でない状態」でいられるのでしょうか。日本人は1年に平均4~5回かぜをひく、と言われています。子どもであればもっと回数は多くなるでしょうし、大人になれば生活習慣病にかかる人も増え、年齢と共に病気になる割合はますます高くなります。そう考えていくと、わたしたちは一生の間のかなりの時間を「病気」とつきあっていかなくてはならなくなります。さらに障がいや慢性の病気を持っている人は、人生のほぼ全部を、その障がいや病気と上手につきあいながら生きていくことが要求されます。

 確かに、健康であるにこしたことはありません。しかしその一方で、病気とともに生きていく時間も長いのだとすれば、学校での保健教育も、「健康である」ということにだけに主眼をおいては不十分だということになります。成長期にある子どもにとっては、発達が保障されるということは生涯にわたって大きな影響を持つことですから、大切なことです。と同時にからだは万能ではない、ということも、病気や障がいのあるからだと上手につきあうのも必要である、ということも教えていかなければなりません。

 つまり、人間の多様なあり方を受け入れられるような「観」が、これからを生きる子どもたちには必要なのです。そのためにも「からだの学習」は、効果的な方法であると言えると思います。