家庭環境の変化

2024年2月11日

応援メッセージです。

被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。さぞかし苦しい1か月だったことでしょう。本校でも復興に役立てればと募金活動を行いました。微力ながら応援の気持ちと一緒に届いてほしいと願っています。

山形県 養護教諭 叶内 実佳

 

二次避難の場所から、2月末、あるいは3月末までに移動を迫られている、という報道がありました。その理由は北陸新幹線が延伸されるから・・・。もちろん、金沢などの観光業の皆さんも大変なのでしょう。
わかってはいてもこの理由は・・・なんとも言えません。

でも、避難所生活が長く続き、仮設住宅ができあがるまで避難所にいることができた3,11の時とは、今回は状況が違うようです。

3,11で避難生活が長くなった数ヶ月後に起きていたことをお伝えします。

この頃、子どもたちの環境、というよりは、大人の環境が大きく変化していました。
今の被災地の状況のように、住み慣れた地元にいるには仮設住宅がたりない、住む場所がない、仕事もいつ再開されるかわからない、そして別の土地に移住するにしても、親の仕事がない、つてもない。

手の打ちようのない厳しい状況は、当然子どもたちにも影響を与えます。

そもそも3,11の時は、子どもたち自身が例えようもない恐怖や失望感、喪失感を持っていた上に、大人たちの混乱は、さらに拍車をかける事態になりました。

学校では友達と会え、一時的ではあっても笑顔が増え元気に見える子どもたちでも、一旦家族の元に帰れば、大人たちの不安顔を見て過ごすことになります。

避難生活が長引くにつれて、家や仕事を失い途方に暮れ、親が落ち込んだり荒れたりする状況を見ている子どもたちが増えていき、子どもたちも不安定になっていきました。親の経済的苦労を目の当たりにして、深刻に感じ取っている子どももたくさんいました。
そのため、生活リズムが崩れたり、ゲームだけに夢中になったり、家族に反抗したり、進路に不安を強く感じたり、「これからどうなるのだろう」という大人の不安をそのまま感じている子どももいました。

こんな子どもたちに、どのように向き合ったのでしょうか。

教員が家庭の状況に入り込むのは、とても難しいことですが、多くの養護教員たちが、子どもと同時に親や家族(祖父母、兄弟姉妹など)との会話を通して、それぞれに寄り添っていきました。
会話を通して家庭環境の変化に気付くこともできました。

環境そのものを変えることはできないけれど、思いを共有すること、苦しさを聞いていくことで、子どもや大人を支えていったのです。

もちろんこれらの問題は、簡単に解決するものではありません。心の傷だって、本当に癒えるには何年もかかるのでしょう。
でも、苦しいときに話を聞いてくれる、気遣ってくれる、寄り添ってくれる人がいる、というそれだけでも子どもにとっても大人にとっても心の支えになると思うのです。

ちょっとした短い言葉だけでもいいので、子どもたちや家族の方に声をかけてあげてください。
人と人の繋がりは、きっと力を与えてくれると思います。